第10回大会のお知らせ

日本精神分析的精神医学会第10回大会が、平成24年3月16日から18日まで広島市アステールプラザにおいて開催されます。この学会が平成14年に誕生し、今回10周年を迎えますことは、大変喜ばしく思いますとともに、本学会員の皆様をはじめ関係諸機関各位の、ご支援とご協力による賜物とあらためて心より感謝申し上げる次第であります。

さて、創設時、学会活動の目的として、「精神医学における精神分析的な理解と視点による臨床実践とその訓練の裾野の拡大」と「精神医学における精神分析的精神療法の専門性のさらなる確立」という二つの柱を掲げスタートいたしました。この10年の間に、精神医学、精神医療をとりまく環境と、求められているニーズには大きな変化があります。我々が学会活動の柱とした二つの命題に照らし、それらにどこまで応えることができたのか、あるいは、どのようなことが将来に向けた本学会の課題として明らかになってきたのか、いま一度検証し、次の10年、20年に向けて確かな歩みを踏み出す機会にできればと願っているところであります。

会長講演として衣笠隆幸先生には「精神分析と精神科臨床―力動的精神医学を中心に」と題し、学会のこれまでの歩みと今後の方向性についてお話していただき、特別講演では森信繁先生に「記憶の科学と精神分析」として生物学的精神医学の最先端の成果と精神分析をつなぐお話をしていただきます。また、パネルディスカッションでは、学会活動の柱の一つである「精神分析的精神医学の教育研修と訓練」について、地方における実情と学会へのニーズを伺います。そして、都市部で実績を積んできた訓練システムの紹介していただいたうえで、フロアを含めて討議し現状の問題点を明らかにし、今後の学会としての研修と訓練の方向性を具体化する上での参考になればと思います。

シンポジウムは主題を「精神病的パーソナリティ」としました。精神科医が精神分析的精神療法を専門性とする意義の一つは、重症な病理を持った患者を対象とした臨床であると思われます。ところがこれまでシンポジウムで「精神病」が正面から直接取り上げられたことはありません。「精神病的パーソナリティ」とは、耳慣れない術語かと思われますが、統合失調症や精神病性の精神疾患を直接意味するものではなく、パーソナリティの中の「精神病的部分」を指します(1957 Bion)。そして、人のこころの中では、それと同時に対象と接触しうる「非精神病的部分」もまた並行して機能しています。その二つの部分が、治療関係の中でどのように展開しているのかを見ていく視点は、後の重症パーソナリティ障害におけるRosenfeldやSteinerによる病理的組織化の臨床概念の発展にもつながり、また、他方、一般精神医学においても重症例における、心気症、身体化、嗜癖、衝動行為などを、具象的な水準での原初的なコミュニケーションとして理解していくうえで重要な視点を提供しました。今回、福本修先生に「精神病的パーソナリティ」の総論的な視点からお話しいただき、平山壮一郎先生、戎正司先生、三宅雅人先生の各先生には成人の症例を中心にした発表をしていただく予定です。このように10周年記念大会にふさわしい充実した内容となるべく準備を進めておりますので、是非、多数のご参加をお待ちしております。

 

日本精神分析的精神医学会

第10回大会実行委員長 浅田護